『第1回 全日本ゲーミフィケーションコンペティション』グランプリ受賞者インタビュー 〜受賞作品「メイキット」に込めた想い・誕生秘話・今後の展望 〜

先日、”ゲームの理論やノウハウを活用した社会問題解決”をテーマにしたコンペティション、慶應義塾大学 社会&ビジネスゲームラボ主催・株式会社オルトプラス協賛『第1回 全日本ゲーミフィケーションコンペティション 〜presented by慶應義塾大学 社会&ビジネスゲームラボ〜』が、開催されました。

今回は、グランプリ受賞者の飯島さんに作品に込めた想いや、誕生秘話、今後の展望についてインタビューさせていただきました。

飯島 玲生さん

コンサルティング会社勤務及び名古屋大学招へい教員。博士(理学)。大阪大学大学院でゲノム科学に関する研究をした後、名古屋大学で大学院の学位プログラムにおける教育開発と事業マネジメントや、データ分析の学術コンサルティング事業立上げ等に携わった後、「学術知やテクノロジーを活用した事業創出」を目指して現職へ。生命科学、教育工学、社会情報学、産学連携、科学技術イノベーション政策等に興味。

 

グランプリ受賞作品「メイキット」とは?

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『メイキット』は、まちの中にある『資源』や『魅力』を使って、 様々な要望が書かれた『まちの声』にこたえるアイディアを発表するゲームです。 まさかの組み合わせに『発想力』で立ち向かい、メイキット(できた)しましょう!

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(公式サイトより引用)

▼「メイキット」公式サイト

https://makeit-game.mystrikingly.com/

▼「メイキット」の概要

まちの散策フィールドワークを取り入れて、地域の魅力や課題の再発見にカードゲームを通じて取り組む機会を創出する、画期的な作品です!

 

「まち遊び」から生まれたグランプリ受賞作品

― 今回は、グランプリ受賞おめでとうございます!受賞作品にかけた思い、こだわりのポイントなどアピールポイントを教えてください!―

この作品は、ゲームを通して新しい価値が生まれることを目指して作ったゲームです。アピールポイントとしては、ゲームを通して、

①まちの魅力が見つかる

②まちの課題が見つかる

③「やってみたいアイディア」が生まれる

の3点ができることです。
実際にゲームをしてアイデアがうまれたり、集まった人がお互い知り合うところからコミュニティが生まれるなど、ゲームを通して次のアクションにつながることを目指しています。ゲームにフィールドを取り入れたのも、散策中にまちの魅力や課題が見つかることが狙いです。

― ありがとうございます!「ゲームを通して」という部分に、こだわった理由はありますか?―

ゲームというツールを通して課題に取り組んだ理由としては、ゲームと地域課題を結びつけることで、多くの方が地域に関心も持ってもらうのに有効なんじゃないかと思ったからです。技術や事業を通して地域課題を解決するというアプローチもありますが、ゲームという枠組み、パッケージをつくることで、幅広い人たちに参加してもらえ、地域の問題に関心を持ってもらえるのではないかと考えました。

― 課題に対しての最適なアプローチを逆算して、ゲームに辿り着いたんですね!今回、制作された作品の自己評価は如何程でしたか?受賞の自信はありましたか?(笑)―

「シリアスゲーム」として多くの人に使ってもらえるものだという自信はありました。ただ新しく始まったコンペであり、審査基準がわからなかったため、受賞するかどうかはわからないままでした。評価いただけたことは大変うれしいことでした。

― 作品として、自信が持てる状態でご応募いただけたんですね!プレゼン(プレゼン動画のリンク)でもあったように、参加者の声でいい評価をいただい ていたことも自信に繋がったのでしょうか?―

これまでのゲーム参加者の方からのフィードバックで、評価いただいている部分はやはり自信に繋がりました。試行錯誤してブラッシュアップを重ねていっていることもあり、作品として精度は高められたのではないかと思います。また、デザインに関して、数十枚のカードのイラスト制作が必要で大変な制作にも関わらず、プロのイラストレーターさんに作品のコンセプトやルールを理解いただいて制作にご協力いただけました。そのことにも感謝しています。

 

― プロのイラストレーターさんもご参画されてたんですね!コアメンバーの飯島さん・中津さん・丸川さんがチームを組んだきっかけ・理由を教えて ください!  ―   

制作メンバーは昔からの友人で、3人で新しい「まち遊び」をつくって楽しむということをしていました。まちを楽しむための遊びを開発していた仲間で、あとの二人は大阪在住です。メイキット制作時の当時、私は名古屋にいて、あるとき、岡崎の地域コミュニティの人と知り合って、何かまち遊びイベントをやろうと日時だけ決めたというのがメイキットが生まれた最初のきっかけです。当初は、「まち遊び」ゲームを作るというワークショップをやろうとしたんですが、集まった人がいきなりゲームを作るのはなかなか難しいんではないかと思いました。そこで、その場で遊んでもらえるゲームを用意しようとつくってみたのが最初のメイキットです。着想から2週間くらいでプロトタイプを使ってイベントを実施しました。その後、2018年に1年かけて全国各地で実証実験を繰り返して、2019年に現在のプロトタイプが出来上がった、という経緯です。

― 昔やっていた「まち遊び」って、どんな遊びだったんでしょうか?―

色々やっていたんですが、「まち遊び」を通じて作っていたゲームで、「まちラクティブ」というゲームを最初は作っていました。チームでまちを探索して、魅力をたくさん発見したら勝ち、というゲームです。

まちラクティブ(https://machiractive.wixsite.com/machiractive

まちラクティブというゲームは、大阪・中之島や福岡・小倉など実際にいろんな場所でやりました。まちなかで魅力となるものがたくさんあるので、まちの人に聞いたり事前にサーチして、収集したまちの魅力が入ったマップをつくります。そして、当日の参加者にはマップを参考に自由にまちの魅力を探して写真を撮るということをしてもらいます。私達が事前に収集した魅力だけではなく、参加者自身が見つけた魅力も写真に撮って追加する、というような遊び方をしてもらいました。2016〜2017年くらいにやっていたことなのですが、ここで見つかった課題がありました。まちを事前にサーチしてまちの魅力を収集したり、マップをつくる作業をしないとゲームができないという点です。また、当時はビーコンをゲームに取り入れたりもしていたんですが、歩きスマホがないようにまち散策をしてもらう工夫が必要……などの気づきはありました。

― そこでの課題の気づきが、メイキットに活かされた部分もあるんですかね!―

そうですね。そこで、「オンラインもいいけど完全に紙にするのもいいな」とか、「ケータイは写真とるだけで、帰ってからその魅力をもとにゲームにしてはどうか」といったような学びを得て、実際にメイキットに取り入れています。

 

「シンプル」かつ「こだわり」を込めて

 

― その後、メイキットを制作するにあたって、企画の考え方について、どのように考え進め たか教えてください。―

あるお題に対してなにかカード組み合わせてアイディアを発想するという大喜利形式のルール自体はシンプルなのでよくあるものだと思いますが、手元のまちの資源カードだけでなく自分で探してきたものも組み合わせられるようにしたのが工夫したところですね。まちの課題とまちの資源だけでなく、

  1. まちの声
  2. まちの資源
  3. まちの魅力

といった、3種類のカードを用意したのは特徴だと思っています。3種それぞれ、情報収集したり議論したり、作り込むのには時間がかかりました。

「まちの声」は、日本全国全ての自治体が策定している地方版総合戦略で挙げられている地域課題を網羅的に取り入れて「まちの声」カードをつくりました。「まちの資源 」は、総務省が地域資源と定義しているものがあったり、そういった情報を参考にしながら、どこまちにもあるものを「まちの資源」カードにするということをしました。「まちの魅力」は、フィールドワークで収集してもらうというルールにしていますが、実際の散策をしなくてもよいように、 「特徴的な建物」「季節の催し」などのまちの魅力になりうるようなデフォルトのカードも用意し、実際に散策しなくても遊べるような工夫をしました。

 

― 企画が固まってからは、どのように進めて作品が形になっていきましたか?―

最初の岡崎市の初版は2017年の10月に作ったので、そこからメイキットの活動を少しずつするようになりました。それからは、本業があるなかの個人活動として制作はゆるやかに進んでいきました。2019年に現在のプロトタイプを作ってからは、メイキットを遊びたい方々に無料レンタルをするとういことを開始しました。

― 岡崎市で実施する前には2週間で初版を作ったとなると、かなりスピーディな印象ですが、企画が固まってからはスムーズに制作が進んだのでしょうか?―

ゲーム自体はシンプルなので、最初に私が作った原案をもとに他のメンバーにコメントをもらってブラッシュアップするということをしました。岡崎で実施したときは中津さんがカードの縁や枠をつくるなどの簡易的なデザインが作ってくれました。2019年にできた現在のプロトタイプの作成はプロのイラストレーターの方に依頼をしてデザインを仕上げました。

― とはいえ、制作中に、課題となったことや、制作において苦労した点もあるのでしょうか?―

原案自体のプロトタイプは大きな時間をかけることなくできたのですが、それから少しずつブラッシュアップしていきました。苦労したことの一つは、ゲームのルールシートの制作ですね。自分がゲームのファシリテートをする場合は参加者の質問に答えたり臨機応変にできるんですが、通常のカードゲームやアナログゲームはルールシートだけをみて理解してゲームを進行できなくてはいけないというのが要件になります。全くそのゲームを知らない人でもルールを見れば進行や流れがわかるようにするのが、地道ではありますが試行錯誤した部分です。

▼実際に制作したルールシート

https://uploads.strikinglycdn.com/files/2999ebf0-620d-4034-a90a-d69c9d27ccbd/メイキットルール公布版.pdf

 

あなたに届けたい、メイキット

 

― そんな苦難を乗り越えての、今回の受賞を受けて、あらたな夢や展望は生まれましたか?今後、タッグを組んでいきたい企業や組織はありますか?―

 

受賞して評価いただいて、このゲームを知る人が増え、応援してくれる企業や大学関係者が増えたことを嬉しく思っています。

今後は、とても地道な活動が必要かとは思いますが、このゲームを知った地方自治体や地域コミュニティの方に使っていただくことを推進したいです。現在はレンタル版が少ないので、今後必要とされている方々に行き届くよう、数も増やしていきたいと思っています。

それと、レンタル版が少なかったこともあり、これまで学校関係者になかなか届けられなかったんですが、教育目的でもぜひ使ってほしいです。

また、行政で本格的に地域の声を拾うのに使いたいのにも協力したいと考えています。私や丸川さんは本業でも行政の仕事もしており、カードゲームを取り入れた行政支援などもできるとおもうので、お力になれる自治体の方がいたらぜひご協力したいです。

あとは、慶応義塾大学のSDMのラボで研修関連の仕事に関わっている方々に使ってもらえる方もいると思うので、例えば、研修の中でもぜひ使っていただければと思っています。

今後タッグを組んでいきたいお相手としては、研修等を実施する事業会社さんや、住民からの意見やアイディアを行政に生かしたいと考える地方自治体、メディアの方々です。地域コミュニティ向けのゲームなので、地域とタッグを組んで地方創生事業などに取り組む企業の方の力にもなれるのではないかと考えています。

だいぶ前からプロトタイプはあったのですが、本格的な市販・流通をしたいということで、今回応募したので、今後はメイキットというソリューションをより多くの方に届けたいと考えています。

 

― 当コンペを通じて発見した改善項目やブラッシュアップできそうな部分の発見はありましたか?―

コンペの時にいただいたコメントで、実際ゲームを届ければ届けた先の方がプレイすることはできるが、ゲームの価値を最大化させるためにはクオリティコントロールも重要ではないか、というご指摘がありました。

おっしゃる通りだなと思ってますので、使いたい方に自由につかってもらう一方で、ゲームを使って得られる価値を最大化し、クオリティを担保するような仕組みも考えていきたいです。

また、流通チャネルついて、大量に作って店舗に置いたり、ネット販売するようなところも強化していきたいと思います。そのために、広報チャネルの強化もしたいところです。

― 素敵なプロダクトなので、ぜひ世の中にメイキットが広がってほしいですね!最後に、メイキットを届けたい方々へ一言くださいませ!―

COVID-19の影響で、2020年はリアルでコミュニケーションが取れなくなってきていると思います。地域でのコミュニティなどは以前から重要な存在でしたが、今はちょっとしたコミュニケーションなどが減ってきていると思うので、メイキットを通じて地域のコミュニティにコミュニケーションの機会を提供し、盛り上げる助力となれれば嬉しいです。メイキットに協力してくれる方が増えてきたので、これからより普及促進し、必要とされている方々のお手元にお届けできればと思っています!

 

インタビュアーコメント:

想いを込めた素敵なプロダクトを制作されたことがよくわかるお話をたくさん聴けて、飯島さんの熱量に感動してしまいました!
本業とは別軸の個人活動の中で、積極的にゲーム制作をされている飯島さんですが、メイキットの他にも、「健康な嘘つき」というゲーム作品を制作されたそうです!こちらもぜひチェックしてみてください!

▼「健康な嘘つき」公式サイト(飯島さんゲームデザイン、中津さんパッケージデザイン)

https://bluff4health.mystrikingly.com/

▼「健康な嘘つき」の概要