ゲーミフィケーションとは、ゲームに使われているメカニクスや手法をゲーム以外のビジネスに応用することで、顧客や社員による利用を促進し、そのビジネスが持つサービスやアプリケーション全体を活性化させることをいいます。
『GDX』は「Gamification for Digital Transformation」の略称で、そのゲーミフィケーションに加えて、ソーシャルゲームやモバイルアプリなどのエンタテインメント性の高い体験デザインとオンラインでの大規模サービスの運営力を、クライアント企業のDX施策やデータ戦略に活かしたいという想いから開始したサービスです。また、『GDXデベロッパーネットワーク』という、ゲームやウェブサービスの開発に関する知見と実績が豊富な、多数の開発会社が参加されている組織も運営しています。
今回は『GDX』のキーマンである、株式会社オルトプラスの小林 陽介氏(以下、敬称略)と株式会社セガエックスディーの片山 智弘氏(以下、敬称略)の対談企画の模様をお届けします。
簡単にお二人の自己紹介をお願いします。
小林:株式会社オルトプラスの小林です。現在はゲーム事業の責任者を担っています。 株式会社オルトプラスはソーシャルゲームの開発や運用を行なっている会社ですが、 創業メンバーの多数がゲーム以外のサービスや広告業界の出身で、ベトナムにオフショアの拠点を持っているなど、非ゲーム領域の事業も幅広く行っています。その中で、ゲームのノウハウが色々なサービスや事業に転用可能なことがわかり、新たにゲーミフィケーション事業を立ち上げました。本日はよろしくお願いいたします。
片山:株式会社セガエックスディー 取締役の片山です。現在は新規事業やアライアンスの管掌をしています。株式会社セガエックスディー は株式会社セガ及び株式会社電通のジョイントベンチャーで、エンタテインメントやゲーミフィケーションのナレッジを活かした事業及び社会課題の解決をメインとして行なっている会社です。 エックステインメントカンパニー(X-tainment Company)という言葉をビジョンにしていて、エンタテインメントで培った力を世の中にどうやって役立てるかを考え、マーケティングや新規事業開発、今回の『GDX』など、DXに役立てるような事業をやっています。本日はよろしくお願いします。
2社が提唱する『GDX』とは既存のDX(デジタルトランスフォーメーション)と何が違うのでしょうか?
片山:今のDXは「より効率化するためには何をすればいいのか」に重点が置かれた左脳的(理論的)な改善手法が主です。 ただ、こういったロジカルな改善手法というのは明確な答えがあるため、パソコンが一般に普及していったように、時間の経過によって徐々に「当たり前」に変わっていきます。
そこで、自社のノウハウであるエンタメを生かした、より右脳的(感覚的)なDXの新しいアプローチを生み出すことで、今までは解決できなかった経営課題なども解決できるのではと考えました。そこから提唱したのが「Gamification for Digital Transformation」『GDX』です。
物事が「当たり前」となった時には、使いやすさや継続性という感覚的な要素で、そのサービスを利用できずに取り残されてしまうユーザーが出てきてしまいます。『GDX』ではそんな問題を、ゲームのノウハウを利用したUXやデザインの観点から解決することができます。この『GDX』という概念でDXはもう一歩先に進めると考えています。
小林:DXはいわゆるIT化とはちょっと違う概念だと言われていますが、 最終的には「企業がユーザーにどんな価値を提供するのか」がすごく大事になってくると思います。 ユーザーに価値を届けるということは、ゲームの分野でずっと取り組んでいたため、 「この問題はゲームのノウハウで解決できるな」ということは感じていました。
オルトプラスとセガエックスディーが協業した理由は何だったのでしょうか?
小林:DX自体がもう一歩先に行けるということは私も感じていたことで、それがセガエックスディーさんと当社が協業するきっかけになったと思っています。
セガエックスディーさんとはもともと親睦があったこともあり、ディスカッションする中でゲーミフィケーションに関しては両者のノウハウ、例えば、セガエックスディーさんではエンタメ企業の知見を活かして先行してゲーミフィケーションをやられていますし、既にナショナルクライアントとの実績もあります。弊社であれば豊富なソーシャルゲームの開発・運用のノウハウや、ゲーム以外のサービス開発経験を提供しあえるというところで、「なら、一緒にやりましょう!」という話が自然に出た感じですね。
片山:そうですね、特にオルトプラスさんとご一緒したいと思ったのが、エンタテインメントの大規模なものやハードな運用が必要なものに対して、アセットが豊富でフィジビリティが名実ともに高い会社さんだということがあります。もちろん、元々親睦があったとか、案件ベースで一緒だったということはあるのですが、一番は可能性を感じてご一緒させていただきました。
あとはオルトプラスさんの『GAME COMMUNE』もですね。開発会社さんのパートナーネットワークはやはりすごく大事だと思っていて、今回の提携枠組みで一気通貫して、全部作れるっていうところがよかったです。エンタテインメントでは、それぞれの会社さんに強み弱み・トンマナがあって、網羅的にパートナーがいるということがすごく重要だと思っているので。
・GAME COMMUNE
オルトプラスが運営するゲーム業界に特化したオープンコミュニティ。ユニークな会社が多いゲーム業界で、それぞれの会社の特長を理解した上でマッチングを行うことで、新たな連携の機会を生み、ゲーム作りをサポートしている。
・GAME COMMUNE 公式サイト:
https://www.gamecommune.jp/
お二人の考える『GDX』の可能性とは何でしょうか?
小林:ゲームの運営や開発をしていて感じているのは、Webサービスをやっていた時よりもユーザーのコンテンツの消費速度が速く、運営を通じての「ユーザーとのコミュニケーション」が特に重要になるということです。それについて考えているときに、ふと「このゲームの考え方って、実は様々なサービスに適応できたら面白いんじゃないか」と思いました。実際、ソーシャルゲームが流行って以降、その後はわりと一般のサービスにもソーシャルゲーム的な要素が含まれているものが増えてきていますよね。最近リリースされた中だとロビンフッドが分かりやすいと思います。今後もそういったアプローチはどんどん増えていくのではと考えています。
片山:まさに、そういう可能性があると思います。セガエックスディーでもゲーミフィケーションを生かして企業の課題をどう解決するかを常に考えていますが、ゲームの力で理解や興味のハードルを下げてあげると、ミドルファネルのユーザーが「よりハマって、より使いたくなる」という感情を作れるのはすごく強いなと思っています。また、可能性という意味だと、ゲームを使うことで普段無関心な層や普通にやったらリーチできない層に訴求できるのも大きいと思います。
小林:そうですね、やはりゲーミフィケーションの良い部分は、普通に生活していたらやっていないようなこともゲームを通じて体験できるという点にもあると思います。ただ、ゲーミフィケーションは1つの手段だと思っていて、ユーザーが「自発的」に「望ましい行動を選択しやすい仕組み」を作っていくことがより重要だと考えています。やらされになっちゃうようなことは、ユーザーさんがやりたくなくなってしまうので。「自分がどうしてもやりたい!」という状況を作ることができるのもゲーミフィケーションの強みだと思います。
ゲーミフィケーションを導入していくことで、「人間自体がもっともっと進歩できる」可能性があることが、私が事業を立ち上げたいと思ったポイントでもありました。
片山:僕もゲーミフィケーションが1個の手段ということは、本当にその通りだと思っています。ゲーミフィケーションという言葉自体は10年ぐらい前からありますが、最近になってすごく一般的になった気がします。この理由は2つあると思っていて、1つは、テクノロジーが追いついてきたことですね。昔のIoTは、センシングを組み込もうとするだけで費用が膨大になったので、実現できることが少なかったですよね。そういった技術的な問題が解決されたので様々な所にゲーミフィケーションのノウハウを使えるようになったかと思います。
もう1つは、メソドロジーとしてゲーミフィケーションが体系化してきたことです。心理的な効果が様々な論文によって判明して再現性を持ってできるようになってきたので、これからさらに広く使われるようになると思います。そういう意味だと、オルトプラスさんとSDMさんとのお取り組みなどもすごく楽しみに思っています。
・SDM(慶應義塾大学 社会&ビジネスゲームラボ)とは
社会のさまざまな問題をゲーム(ビジネスゲーム、人材育成ゲーム、サプライチェーンマネジメントゲーム、社会ゲーム、経営ゲーム、プロダクトデザインゲーム)を使って考え、課題を解決することを目的とした研究会。ゲームを活用して社会の様々な問題や課題を解決することの良さを広げるために「全日本ゲーミフィケーションコンペティション」を開催。オルトプラスが協賛している。
・第2回 全日本ゲーミフィケーションコンペティション:
https://www.altplus.co.jp/jgc/the2nd/
『GDX』の今後の展望を教えてください。
小林::「ゲーミフィケーションとは何か」を『GDX』という枠組みの中で作っていきたいと考えています。『GDXデベロッパーネットワーク』に所属している開発会社さんそれぞれが、成熟したゲーミフィケーションのノウハウをお互いに共有しあうことで、世の中のDXが、『GDX』を通して前に進んでいくことが作れれば良いと思っています。
片山:いいですね!そういう、市場を育てていくこともやっていきたいですね。
共通言語を作ってみんなで進化させていく。
小林:そうです!こういうことは一社独占でやっていくことが良さそうに見えて、実はそうではないんですよね。オープンソースによって、これだけ世の中のテクノロジーが発展したことを考えると、『GDX』自体を「オープンにしていくこと」がすごく大事だと思っています。そういう考えもあって、『GDX』では『GDX News』というメディアも同時に運営しています。
今後は、イベントを通じてゲーミフィケーションの良さやノウハウを共有していきたいですし、DX化を推進する企業様に対して、「こういうことをやっていくと良くなりますよ」ということを我々が発信していければと思っています。いま、『GDXデベロッパーネットワーク』に参加されている開発会社さんにお話を聞いているのですが、本当に各社色々なことをやられています。例えば、各社がR&Dでやられていることが、別の企業の課題解決につながるなんてことも今後頻繁に出てきそうですし、そういったマッチングも『GDX』でしていきたいと考えています。
片山:そうですね。あとはゲーミフィケーションのそういった施策や、DXのエンタメアプローチを逆に海外に広げていくなどのポテンシャルも含めて、『GDX』でコアに発信できたら楽しそうだなと思っています!
『GDX』では現在、デベロッパーネットワークにご参加いただける開発会社を募集しています。デベロッパーネットワークへのご参加についてのお問い合わせは、下記のURLよりご連絡ください。
https://g-dx.jp/developer-contact