今回は、ふるさと納税におけるゲーム関連のNFT事例をご紹介します。
ふるさと納税の対象商品にゲームのハードウェアやボードゲームなどは多くみられますが、特にNFT(Non-Fungible Token)を活用した返礼品に限定してご紹介します。
ふるさと納税の返礼品は、食べ物が目立っていますが、ゲームコンテンツも増えてきています。ふるさと納税でオトクにゲームが遊べてしまう。そのために、つい納税してしまう。まさにここにも、ゲーミフィケーションがあるのではないでしょうか?
ふるさと納税を行う自治体は、経費を寄付額の50%以内に抑えなければならないルールがあるそうです。この経費の中でやりくりする必要があり、ふるさと納税ポータルサイトへの掲載手数料もあるため、返礼品選定の工夫も必要となっているようです。とはいえ、相変わらず年末のふるさと納税駆け込み需要は健在のようです。
最近のニュースで、ネット通販大手のアマゾンジャパンが来年春にも、ふるさと納税の仲介事業へ参入を検討中であるというニュースもあり、まだまだ話題に事欠きません。
■ふるさと納税のNFTってどうなの?
非常に多くの方がふるさと納税を経験したことがあるとおもいますが、簡単におさらいしましょう。
ふるさと納税とは、
「納税」という言葉がついているふるさと納税。
実際には、都道府県、市区町村への「寄附」です。
一般的に自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税及び住民税から控除されます。ですが、ふるさと納税では原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。(出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/about/
また、NFTについても簡単な解説を記入しておきます。
NFTとは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のこと。暗号資産(仮想通貨)と同じく、ブロックチェーン上で発行および取引される。従来、デジタルデータは容易にコピー・改ざんができるため、現物の宝石や絵画などのような資産価値があるとはみなされなかった。
この状況を変えたのがブロックチェーンだ。ブロックチェーン上のデジタルデータは、参加者相互の検証が入ることでコピーや改ざんをしにくくし、デジタルデータの資産価値を持たせられるようになった。ビットコインが数百万円でやり取りできるのは、この仕組みのおかげだ。(出典:Fintech Journal NFT 関連記事より一部抜粋)
https://www.sbbit.jp/article/fj/60992
また、ふるさと納税にNFTを活用するメリットを、SBINFTがまとめていましたので一部をご紹介します。
自治体がふるさと納税にNFTを活用するメリット
①デジタル関係人口の増加による自治体の活性化
②都市部と地方のNFTに関する情報格差の解消
③日本円決済で寄付が完結し、暗号資産決済は不要!(出典:SBINFT : ふるさと納税関連記事より一部抜粋)
https://sbinft.co.jp/furusatotax/
これ以外に考えられる自治体のメリットとして、在庫管理、鮮度、賞味期限等への配慮が少なく済むということも考えられるため、今後おすすめできる返礼品と言えるのではないでしょうか?
それでは、事例をご紹介していきます。
■兵庫県 加西市 ブロックチェーンゲーム「Crypto Spells(クリプトスペルズ)」
1つ目の事例は、兵庫県加西市の「ブロックチェーンゲーム『Crypto Spells』で使用できるNFT」です。
『Crypto Spells』とは、2019年6月にCrypto Gamesがリリースした、日本初のブロックチェーン技術を活用したNFTカードゲームです。2021年8月には遊んで稼げる「Play to Earn」の仕組みが導入されており、国内だけでなく海外のプレイヤーから注目を集めています。2019年当時は、ブロックチェーン技術を活用した珍しいゲームということもあり、リリース初日に600ETH(約2,000万円)の売上を記録しました。
(出典:LIFE TREND : CryptoSpells解説記事より一部抜粋)
人気の背景として、ゲーム内外でカードを売買可能できることや、更には自分だけのオリジナルカードを発行できることも成功要因でした。アニメやゲームのキャラクターとコラボしたカードが登場したり、商品・景品があるユーザー主催の大会が頻繁に開催されていたり、多くの話題が継続していることも後押しし、人気の高いNFTカードゲームとなりました。
このゲーム内で利用できる返礼品を提供する加西市の条件は寄付3万円で、2種×333枚のNFTカードの提供でした。そのNFTカードは加西市を走る北条鉄道や、まちのシンボルの気球がモチーフとなっており、日ごろふるさと納税に無縁なゲームユーザーからも納税してもらう機会を創出していました。
(参考記事及び下記画像出典元:PR TIMES 株式会社あるやうむ プレスリリース )
この「Crypto Spells」のNFTは、ふるさと納税以外にも様々な企業とのコラボが成立し、例えば「SBINFT MarketでのCryptoSpellsのカードゲーム用NFTを販売」や、「NFTわんこ育成アプリ『LOOTaDOG』とCryptoSpellsとのコラボカードNFTを公開」など、コラボレーションが活発に行われました。
■新潟県 燕市・三条市 「燕三条NFT 匠の守護者」
2つ目の事例は、ものづくり企業を擬人化した「燕三条NFT 匠の守護者」です。
新潟県燕市と三条市が共同でふるさと納税においてNFTトレカ「燕三条NFT 匠の守護者」を共通返礼品とし、2023年に寄付申込み受付が開始されました。
燕市と三条市の総称である燕三条としての新たな世界観へ踏み出し、NFTによって世界とつながり、共に飛躍していく物語の始まりとして、燕市と三条市の共通返礼品に採用された背景があります。また、複数自治体が採用するNFTの共通返礼品は全国初※の取り組みだそうです。(※トラストバンク社調べ)
NFTの保有数によって、燕三条地域で使えるイベント参加券や飲食店クーポンなどの特典を用意し、観光促進、関係人口増加を図り、燕三条DAOのDiscordサーバーとも連携し、地域活性化を促進するだけでなく納税後にもつなげる狙いもあるようです。
ゲームの詳細等は、上記出典元リリースや参考記事を参照ください。
ちなみに、この企画は、三条市のふるさと納税を7億円から30億円に増大させた元外資系サラリーマンである三条市のCMO・澤正史さんの発案だそうです。
この「NFTトレカ『燕三条NFT 匠の守護者』」は、現在第6弾へと進化しています。第1弾では、30キャラクターをNFT化し、Tales & Tokensが提供するゲーム「Tales & Tokens」で収集したり、デッキを組んだり、アイテムやスキルを手に入れて育成したりすることができる仕組みでした。そのなかで、燕三条の擬人化キャラクターをローカルゲームのプレイヤーとして育成する楽しみをもたせることで、燕三条の魅力に触れるだけでなく、地域の魅力を自分ごと化することを狙っています。地元企業を擬人化したNFTキャラクターを購入したい場合は、ふるさと納税が必要となるわけです。
さらに第2弾では、キャラクターと聖地巡礼できる新機能が追加され、観光誘引にもつなげることで上手く関係人口づくりが仕組み化されています。
NFTや暗号資産への不安解消にもフォローを万全にしており、初めての方でもわかりやすい解説やサポートが充実していることも、この取り組みをさらに魅力的にしています。
ゲームの開発や成り立ちなど、スマートワーク総研に記事がありましたので、そちらも参考にしてみてください。
(参考記事:スマートワーク総研 関連記事)
■岩手県 遠野市 「遠野物語NFT『ゲーム・オブ・ザ・ロータス 通常版』」
3つ目の事例は、岩手県遠野市の「遠野物語NFT『ゲーム・オブ・ザ・ロータス 通常版』」です。
ゲーム・オブ・ザ・ロータスは、柳田國男の『遠野物語』に描かれた数々のエピソードをイラストとストーリーで再創造するコミュニティであり、遠野での観光や飲食をさらに楽しむためのゲームです。ユーザーは、キャラクタートークン(NFT)を入手することで、コミュニティに参加したりゲームで遊んだりすることができます。
Game of the Lotusは、柳田國男の『遠野物語』に登場する数々のエピソードを現代風にイラストとストーリーで再創造していくコミュニティとなっており、遠野観光や訪問者が飲食する際に楽しめる工夫を凝らしたゲームです。ユーザーは、キャラクタートークンを入手することで、コミュニティ参加やゲームを遊ぶことができます。
キャラクタートークンを開封すると入手できる、遠野三山の姫神の「あめ」「うみ」「みお」のいずれかのキャラクターで「ゲーム・オブ・ザ・ロータス」のウェブアプリ内でカスタマイズ(着せかえ)が楽しめる工夫を凝らしています。
また、ゲームでは遠野の観光施設や飲食店と提携しており、さまざまな場所や飲食店を訪問する際に、その場所にある二次元バーコードから「チェックイン」をすると、新しいアイテムが入手できることで、観光や地元飲食店への回遊を促進しています。
■岩手県 紫波町 「オンラインゲームのキャラクターNFT」
最後4つ目の事例は、岩手県紫波町の取り組みです。2022年10月からオンラインゲームのキャラクターのNFTをふるさと納税の返礼品に加え、比較的高額な67,000円からという寄付金にもかかわらず、約140人の寄付者ということですから、900万円以上の寄付を集めたようです。工夫は、「デジタル町民」という新たな視点での構想にありました。
ユーザーが使用するブタのキャラクターが返礼品であるNFTデータとなっており、そのキャラクターの育成度合いや、レースの勝敗でデータの資産価値が変わる仕組みで、そのデータは暗号資産に換金することができる、というものです。
紫波町は前述のとおり、関係人口づくりの施策として「デジタル町民制度」を推進してきました。ふるさと納税などを通じて紫波町のNFTを保有する町外の人を「デジタル町民」として認証し、町のサービスを受けることができるようにし、さらに町政にも関わってもらおうという構想をこのゲームで実現したのです。
これだけではなく、試験的に運用をはじめたNFT保有者と紫波町民とをつなげるオンラインコミュニティでは、町の課題解決のためのアイデアが議論され、町の障がい者が制作するアート作品をNFT化しようというプロジェクトにもつながっていったそうです。
(引用画像及び参考記事:NHK盛岡放送局 岩手取材ノート記事より)
紫波町は、2022年6月にWeb3タウン表明のリリースを発表しています。国内外問わずどこからでも同町のまちづくりに参加できる「DAO(分散型自律組織)(※1)」を活用したものです。現在、ふるさと納税の返礼品のひとつに、「Furusato DAO」のNFTロゴを出品しており、このロゴが「デジタル町民」として住民証明にも利用でき、関係人口として実際の住民でなくとも町の施設などで特典を受けることが可能で、町の活性化に上手くつなげています。
■気になる今後の展開は?
今回は、地方自治体のふるさと納税にゲーム関連NFTがどのように活用されているか、についての事例をご紹介しました。
NFTというとアートが目立ちますが、ゲームコンテンツに着目したNFTの返礼品の動向は気になるところです。「遠野物語NFT『ゲーム・オブ・ザ・ロータス』」はバージョンアップしながら2年連続での返礼品として継続されています。一方、返礼品としてはもう存在しないものも出てきていますが、在庫管理の面からも、ゲームコンテンツのNFTは、自治体の経費面でもメリットがあるだけでなく、地方創生や地域のPRにつながる可能性に満ちていると言えないでしょうか?
今回ご紹介したふるさと納税の返礼品NFTのみならず、今後はもっとゲームコンテンツが活用される動きが増えそうですね。
「人口減少」「少子高齢化」「都市型志向」は、都会に住んでいる方には、なかなか実感を得にくい問題かもしれません。しかし、日本の地方では人口減少が問題になっており、過疎化でより消滅が想定される地域が数多く存在します。こうした取り組みが、少しでも地域活性につながればと感じました。
まだまだ事例は少ないですが、新しい返礼品の取り組みとして、これからの展開も目が離せません。地方自治体のふるさと納税の関係者にとって、とてもヒントになる事例ではないでしょうか?参考にしていただけたら幸いです。
※1)
DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)は、従来の中央集権型組織と異なり、ブロックチェーン基盤による参加者同士が協力しながら管理・運営する組織のこと
注)
本記事は、ふるさと納税サイトに誘導する目的ではなく、あくまで事例の紹介となります。
現在、ふるさと納税の募集を行っていない事例も含みます。