ゲーミフィケーション活用の研修事例をご紹介

  • 2024年6月26日
  • 2024年6月28日

先日、株式会社ナカシンから「『禁酒マン』アプリがインストール数10万人突破!」という内容のリリースがありました。禁酒をゲーム化したアプリ「禁酒マン」では、禁酒の期間が長くなるほどユーザーが仮想の会社内(株式会社シラフ)で昇進していく仕組みが採用されています。ゲーミフィケーション要素を取り入れ、ユーザーが楽しみながら禁酒を続けられるよう、健康意識の向上とモチベーションの維持に工夫がされています。
近年、企業でも研修にゲーミフィケーションを導入し始めています。これは、企業の成長と社員のスキル向上にとって重要な戦略となりうるためです。では、どのような効果が期待できるのか、具体的な事例をご紹介していきます。

株式会社KAMA-CROWDのチームビルディング研修

出典:PRTIMES  株式会社KAMA-CROWDプレスリリースより(画像は過去研修の様子)

株式会社KAMA-CROWDは、オフサイト研修やミーティングを専門とする企業で、企業ごとの課題に合わせたプログラムを提供しています。この企業と他2社とのアライアンスにより、2024年3月8日に、ゲーミフィケーション型と屋外の観光スポットを活用したアクティビティ型を組み合わせた研修を大手システムインテグレーター向けに実施しました。
研修の目的は、人事異動、新入社員の入社が重なる4月からの新年度を前に、新部署、新体制に向けた従業員とのエンゲージメント強化です。

1日で行われる研修内容は主に屋内のゲーミフィケーション型と屋外のアクティビティ型に分けて実施されています。
ゲーミフィケーション型は、AI時代の新感覚を取り入れたチームビルディング研修で、デジタルツールを活用し、参加者が仮想の問題を解決するゲームに参加する形式です。
屋外アクティビティ型は、鎌倉の観光スポットを巡りながら、リアルなチームチャレンジを行うことで、自然なコミュニケーションとチームワークの強化を狙ったものです。

この研修は、デジタルとリアルを融合させることで、多様なスキルをバランスよく高め、社員のモチベーション向上とエンゲージメントの強化に貢献する取り組みだと考えられます。
業務上のコミュニケーションだけでチームメンバーとの関係を築くのではなく、屋外やゲーム要素を取り入れた、職場とは違う環境に身を置き、社員が自分自身やチームメンバーの新たな面を発見することによって、業務上のポジティブな取り組み姿勢や、コミュニケーションの円滑化も期待できます。その先には、生産性向上による業績拡大を狙うことが期待できる研修です。

株式会社サーカスの『マーケティングファクトリー』

出典:PRTIMES  株式会社サーカス プレスリリースより

法政大学ビジネススクール発のベンチャー企業である株式会社サーカスは、2024年2月1日にゲームとインストラクショナルデザインを活用した研修プログラム「マーケティングファクトリー」の提供を開始しています。

想定ターゲットは主に2つあり、1つは、ビジネス経験が浅い内定者、新入社員、若手社員向けのオリエンテーションの際に、エンゲージメントの向上と基本的なビジネススキルの理解を深めてもらうことです。この際、ゲームプレイに重点が置かれ、研修内容は参加者の経験レベルに合わせて調整されます。ゲームを通じて、チームワークや問題解決能力などの実践的なスキルを楽しみながら学ぶことができる内容です。
また、幹部候補管理職向けには、経営に必要な深い知識とスキルを提供することを目的に、『マーケティングファクトリー』を疑似経験ツールとして利用し、ゲームを介して、戦略立案、意思決定、財務管理などの経営に関わる重要なスキルを体系的に学ぶことができるようになっています。

『マーケティングファクトリー』は、工場を舞台にした4人対戦型のオンラインビジネスゲームで、各プレイヤーは、設備や人材への投資、製品の製造、販売を行い、純資産の増加を目的としています。当ゲームをうまくすすめるためには以下のポイントを意識する必要があります。

  • 市場のニーズの把握
  • 競合他社の経営状況の把握と戦略の読み
  • メイン市場の選択と競合他社を加味した自社製品の差別化戦略
  • 売上向上と利益向上の違いを意識した投資戦略
  • 予想売上と仕入れ値や固定費の把握や、資産とキャッシュの違い意識した財務分析と戦略

『マーケティングファクトリー』の研修パッケージは、オンラインゲーム上でビジネスに必要なマーケティング知識や財務知識を学ぶことができ、ゲーム内の財務分析ツールは実際の経営で使用されるものと同様のレベルとなっており、実践力が身につく仕組みです。
また、研修はeラーニングによる知識のインプットと、グループワークを通じた実践的なスキルのアウトプットで構成されています。
このプログラムは、参加者の知識の定着と行動変容を促進し、特に幹部候補管理職向けに実践的スキルを提供しています。

この株式会社サーカスですが、他にも『沿革ゲーム』というユニークな社員教育の仕組みを作っています。企業の歴史や企業文化を社員ひとりひとりに浸透させることは非常に難しいことですが、企業の歴史や成り立ちをインタラクティブなボードゲームにして楽しんでもらいながら学べる仕組みとなっています。『沿革ゲーム』は、会社を好きになってもらいながら、離職防止にもつながる可能性をもつのではないでしょうか?

『沿革ゲーム』:https://historygame.sirkus.co.jp/

株式会社クラスコと金沢工業大学による『PSup( ※1 )』

出典:金沢工業大学 ニュース記事より

金沢工業大学経営情報学科4年(2023年12月当時)の白山(しらやま)さくらさんが大学の卒業研究で、大学卒業者の就職後3年以内の離職率は32.3%(※2)という社会の問題を解決しようと、企業における良好な人間関係の構築をめざし、ゲーミフィケーション教材『PSup』の開発を行いました。

白山さんが就職した株式会社クラスコ(金沢市)は、不動産事業を展開する企業で、同社の社員研修として『PSup』をワークショップ教材とした体験会を実験的に実施し、効果検証を行っています。

出典:金沢工業大学 ニュース記事より personalityカードとproblemカードの例

『PSup』については、以下の金沢工業大学のニュース記事を引用しました。

“『PSup』は、2人から5人のグループで遊びながら、さまざまな個性を知り、その個性を活かしながら社会に存在する問題をグループで解決していく協力型の問題解決ゲームです。ゲームを通じた活発なコミュニケーションにより、「誰もが意見を言いやすい環境づくり」や「異なる価値観の受容」といった企業における良好な人間関係の構築をめざしています。”

ゲームの基本ルールは、「ポジティブな言葉遣いを心掛ける」「人の意見を否定しない」「誰かが話していたら、最後まで話を聞く」「遊び感覚で楽しく取り組む」「制限時間以内に多くの星をGetしたグループの勝ち」となっています。
参加者は「personalityカード」を1人1枚引き、互いの個性を確認します。さらに、「problemカード」をグループで1枚引き、それぞれの生活環境や内面などの課題を、個性を踏まえて解決できるような提案や話し合いをすすめます。話し合った内容で良いと思った発言者に「fanカード」を渡し、最終的には全員が発言を行うことで「problemカード」の解決としています。

『PSup』は、チームワークとコミュニケーション能力を高めるゲーミフィケーション教材として開発されました。この研修プログラムは、社員が互いの意見を尊重し、良好な人間関係を築くための要素に着目し、傾聴力、コミュニケーション能力、心理的安全性を高められる効果が期待できそうです。


(※1)   PSup:「Psychological Security(心理的安全性)up」の略。
(※2)  ※厚生労働省2023年10月20日公表「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html による

中京テレビ放送株式会社の『社員クエスト』

出典:PRTIMES  中京テレビ放送株式会社プレスリリーより

こちらも、若手社員の離職課題をゲーム形式のワークショップで解決することを目的に中京テレビと、イグニション・ポイント株式会社との共同で作られました。
このワークショップの中では、社員の本音を引き出し、組織課題を解決することを目的としています​​。

『社員クエスト』とは、メタバースを活用したRPG型ワークショップで、参加者は仮想のキャラクターとなり、組織内の問題解決に挑むミッションをこなしていきます。心理的安全性を徹底し、匿名性を確保しながらすすめることで、参加者が自由に発言できる環境を提供しています。
テレビ局の強みである「エンタメ要素+コミュニケーションを活性化させるファシリテーション」が他社との差別化ポイントとなっているようです。
ワークショップで出た意見は管理職にフィードバックされ、研修講師と共に「360度評価」や「性格タイプ診断」などのアセスメントも活用し、定性定量両面のデータから改善策を立案できる研修となっているようです。

これらの研修アプローチは、ゲーム形式で楽しく積極的に学べるようにすることで、社員の率直な意見を引き出し、組織の隠れた課題を明らかにするだけでなく、結果として組織のエンゲージメント向上を狙ったものです。若手社員のエンゲージメント向上や離職率低下だけでなく、管理職のマネジメント課題発見とスキル向上への効果も期待できると考えられます。

まとめ

これらの事例からもわかるように、ゲーミフィケーションを研修に活用するポイントには、例えば、社員のモチベーションの向上、学習効果の向上、チームビルディング、柔軟な対応力の育成、離職防止などが考えられます。企業がこの手法を採用することで、効果的な人材育成を実現し、競争力を高めていくことに繋がっていくでしょう。
最後にそれぞれについて、簡単にですがまとめておきます。

  • モチベーションの向上
    ゲーミフィケーションには、ゲームの要素を取り入れることで研修を楽しくし、参加者のモチベーションを高める効果があります。達成感や何等かの報酬を提供することで、社員の積極的な参加を促進します。
  • 学習効果の向上
    ゲーム形式の研修は、参加者が自発的に学び、実践する機会を提供します。これにより、理論だけでなく実践的なスキルが身につきやすくなります。事例の『マーケティングファクトリー』では、経営戦略やマーケティングの知識を実際のシナリオで学ぶことが狙いのひとつとなっています。
  • チームビルディング
    チームによるゲーム展開は、社員同士のコミュニケーションを促進し、協力し合う姿勢を養います。社員が協力して課題を解決することで、強固なチームワークを築く助けになります​ 。
  • 柔軟な対応力の育成
    ゲームは予測不可能な状況のシミュレーションに適しており、社員が多様な問題に柔軟に対応する力を養うのに役立ちます。これにより、現実の業務でも迅速かつ適切な対応が可能になります。
  • 離職防止
    楽しく魅力的な研修環境は、社員の満足度を高め、離職率の低下に寄与します。特に若手社員へのエンゲージメントの高い研修は、企業への帰属意識を強め、長期的な雇用関係の維持に繋がります。

これらの理由から、企業が研修にゲーミフィケーションを取り入れることは、社員のスキル向上とエンゲージメントの強化において、非常に効果的な手法になりうると考えられています。

今回も、お付き合いいただきありがとうございました。