「脳トレ」や「脳ゲー」と聞くと、真っ先に思い浮かぶコンテンツは何でしょうか?
今では、一つのジャンルとして広く受け入れられていますが、
今から15年前に発売されたゲームソフトを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」
任天堂より発売された、ニンテンドーDSのゲームソフトです。
このソフトには、ゲーミフィケーションに関係する要素が非常に多く組み込まれていますので、分析していきたいと思います。
脳を鍛える大人のDSトレーニング
出典元:https://www.nintendo.co.jp/ds/andj/ より
■脳トレは社会現象に
正式タイトルは『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』(以下:脳トレ)
“脳トレ”という言葉が、新語・流行語大賞にノミネートする程の社会現象にまで発展し、空前の脳トレブームを巻き起こしすきっかけを作った作品と言えます。
タイトルにもある通り、東北大学未来科学技術共同研究センター教授・医学博士の川島隆太氏が監修しています。
川島隆太氏は、認知症患者の脳機能の回復や認知症予防の研究に取り組んでおり、毎日短時間の読み・書き・計算を継続的に反復学習することによって、認知症患者の脳の再活性化を促し、脳機能の改善、回復を促すという理論を発表しました。
その理論の要素をゲームソフトに反映したものが、同作品となります。
■シンプルだがやりこめる
それでは、実際に脳トレの内容について触れていきたいと思います。
主な機能は下記になります。
・脳のトレーニング
・脳年齢のチェック
・脳年齢グラフ推移表示機能
・家族4人までの脳年齢の競争
・豆知識(教授語録)
・通信機能
・多人数プレイ
その他にも、通常のトレーニングとは別に、「朝起きて最初にしたことは?」「昨日の夕食は?」などの質問や、記憶力だけで絵を描くクイズなども突然登場したり、オリジナルハンコデザインを作成できる機能などもあり、随所に楽しめる要素が組み込まれていました。
■あなたの脳年齢は何才?
脳トレにおけるゲーミフィケーション要素について見ていきましょう。
・トレーニング成績のフィードバックを”脳年齢”と表現する事で自分ごと化出来る
出典元: 脳を鍛える大人のDSトレーニング ゲーム内画像フィードバックは、行動した結果について良かったのか悪かったのかを実感させる為の要素です。
つまり、いかにプレイヤーが実感しやすいかがポイントです。
そのような意味で、脳トレの一番の発明は、”脳年齢”というワードではないでしょうか。
これが、点数やレベルだったら全然体感が変わってしまっていたかもしれません。
”脳年齢”というワードを使う事で、一発で自分ごと化でき、自分の年齢と比較して大きく乖離がある場合は、危機感をもってトレーニングに取り組むことが出来るようになるのです。
・スコアボードを活用した家族との競争
出典元: 脳を鍛える大人のDSトレーニング ゲーム内画像競争とは身近な相手の動きを把握する事で、モチベーションをアップさせる為の要素です。
脳トレにおいては、その競争相手は一番身近な家族を対象としました。
脳トレでは、脳年齢の変動幅が大きい事からも、例えばお父さんよりも子供の方が脳年齢が高かったなどの事も起こりえる為、家族全員での競争が成立する数少ないタイトルの一つなのではないでしょうか。
・グラフを活用したスコアの可視化による成長実感
出典元: 脳を鍛える大人のDSトレーニング ゲーム内画像スコアは今自分がどの位置にいるのかを示してくれる要素です。
脳トレにおいては、自分の位置をグラフで表してくれることで、自分の位置がどのように変動しているかが非常に分かりやすく、あとどのくらい成長すれば目標に到達できそうかが実感しやすい為、継続プレイにつなげる事が可能です。
・ハンコカレンダーによる蓄積の可視化による継続性の向上
出典元: 脳を鍛える大人のDSトレーニング ゲーム内画像脳トレは”毎日短時間のトレーニングを継続する事により脳が活性化される”という理論が前提となっている事もあり、毎日プレイしたくなる要素が組み込まれています。
その一つがこのハンコカレンダーです。
これはソーシャルゲームにもよく導入されるログインスタンプと同様の仕組みで、毎日1回プレイした事の蓄積を可視化してくれる為、明日もプレイしようという気持ちにさせてくれるのです。
また、脳トレでは、自分でハンコを押すという体感も、より明日も押そうという気持ちを増幅させてくれるポイントになっていると思います。
他にも、行動結果を実感しやすい要素が組み込まれています。
トレーニング結果に表示される、ロケット級、飛行機級、新幹線級、自動車級、自転車級、徒歩級の6つの階級などもその一つです。
他のゲームにはない独特なワードセンスも脳トレの魅力の一つになっているのではないでしょうか。
筆者も、脳トレが発売された当時にハマった一人でした。
当時は単純に面白いという感情でやりこみましたが、改めて振り返ってみると、沢山のゲーミフィケーションに通ずる要素が入っていたことに驚くと共に「だからハマったのか」と納得できました。
今回の考察を通して、学習やトレーニングなどが、”辛い”とか”面白くない”と思われがちな理由は、”行動に対してのフィードバックや成長の可視化がされにくい”事が一つの要因である事が改めて分かります。
行動に対して正しいフィードバックや成長や蓄積の可視化があるだけで人はモチベーションを持って取り組むことが出来る、という点は大いに参考になるのではないでしょうか。
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